共謀罪の新設に反対する会長声明 

平成15年の通常国会から衆議院解散に伴う廃案を挟んで4国会にわたって継続審議となっている刑法、刑事訴訟法、組織犯罪処罰法などの改正法案(以下「法案」といいます)が、今国会において審議日程に上っています。

しかし、法案は、以下のとおり、「共謀罪」という市民生活にとって重大な脅威となる新たな犯罪類型を創設するなど看過できない問題を含んでいます。

共謀罪とは、「長期4年以上の刑を定める犯罪」(強盗、殺人などの凶悪犯罪から窃盗、横領、背任などまで合計557の犯罪)について、「団体の活動として」「当該行為を実行するための組織により行われるもの」の「遂行を共謀した者」に対し、一定の有期懲役刑を科すというものです。即ち、共謀罪が成立するためには、凶器や犯行のための道具を買うなどの準備行為も不要であり、組織的犯罪集団の行為である必要はなく、「犯行の合意」という誠に不明確な、いかようにも解される概念により処罰することができることになり、思想信条の自由、表現の自由、集会・結社の自由などの基本的人権に対する重大な脅威となるものです。

また、共謀罪の捜査は、具体的な法益侵害行為を対象とするのではなく、会話、電話、メールなどのあらゆるコミュニケーションの内容を対象とするため、捜査の自白への依存度を強め、犯罪捜査の通信傍受に関する法律の適用範囲の拡大や、メールのリアルタイム傍受の合法化も予測されます。

更に、共謀罪の新設は、「国際的な犯罪の防止に関する国際条約」の批准に伴うものとされていますが、この条約では、締結国の国内法の原則に照らし、「合意の参加者の一人がその合意の内容を推進するための行為があったとき」或いは、「組織的犯罪集団の関与するもの」に処罰範囲を限定することを明確に求めており、更には、条約の審議過程によれば、「越境犯罪」に処罰範囲を限定することも可能です。 しかし、法案はこのような指摘をも無視したものです。

当会は、提案されている共謀罪は、刑法の基本原則に反し、その人権保障機能にも反するものであるので、法案が規定する共謀罪を制定することに反対いたします。

2005(平成17)年6月23日
静岡県弁護士会
会長 三井 義廣

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