自衛隊のイラクからの即時撤退等を求める会長声明 

当会は、昨年12月22日、イラクへの自衛隊派遣について、その根拠となるイラク復興支援特別措置法はイラクにおける自衛隊の武力行使を事実上容認するもので国際紛争を解決する手段として武力の威嚇又は武力行使を禁じた日本国憲法に違反するものであるとして、これに反対する会長声明を発した。しかしながら、政府はその後、イラクに自衛隊を派遣した。

政府は、自衛隊を復興支援の名目で派遣したのであるが、実際には、航空自衛隊は米兵の輸送(既に20回近くも米兵を輸送したことを空幕長が認めている)を含む占領軍兵站などの後方支援を担当し、サマワの陸上自衛隊も、550人のうち実際の給水・衛生・施設などの復興支援にあたる者は120人に過ぎず、対戦車砲や装甲車両を操る警備部隊が130人、この地区の治安を担当するイギリス・オランダ軍の兵站支援を含む後方支援活動を担当しているのが300人といわれている。このような自衛隊の活動の実態から、自衛隊が攻撃を受けて武力行使にいたる危険性は、非常に高いといわざるを得ない。

政府は、陸上自衛隊の派遣先であるサマワは戦闘地域ではないとして自衛隊を派遣したのであるが、派遣後イラクにおいては戦闘がさらに激しくなり、4月8日には自衛隊宿営地直近に向けて迫撃砲が撃ち込まれて着弾するなどサマワも非戦闘地域とはいえないことが明らかになった。自衛隊が攻撃を受けて武力行使に至る危険性が実際にも極めて高まってきたのである。今日、これまで比較的安全とされたイラク南部でもシーア派と米軍など占領軍との間の激しい戦闘行為が発生し、現在も多数の死傷者が生じており、さらに日本人民間人合計5名が誘拐され、自衛隊即時撤退の要求がなされるに至り、政府は国民に対しイラクは危険であるとして渡航自粛を強く勧告するなどの状況にある。

イラク復興支援特別措置法第2条は「自衛隊等の対応措置は非戦闘地域において実施し、武力による威嚇または武力行使にあたるものであってはならない」との基本原則を掲げるが、イラクの今日における状況は、もはや「非戦闘地域における人道支援」という上記基本原則をも満たしていないことは明らかである。

よって、当会は、昨年12月22日の会長声明を再確認し、改めて自衛隊のイラク派遣に反対するとともに、現在派遣されている自衛隊の即時撤退と今後の派遣中止を求めるものである。

2004(平成16)年4月21日
静岡県弁護士会
会長 小川 良明

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