「出入国管理及び難民認定法」改正案に反対する会長声明 

政府は,本年3月7日,出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)の改正案を国会に提出した。

入管法については,2021年(令和3年)の国会にも改正案が提出されたが,長期収容が恒常化している入管行政にまつわる問題点が様々に指摘され,最終的には取下げられていた。また,この改正案に対しては,当会も,2021年(令和3年)5月7日に会長声明を発出し,その問題点を指摘していたところである。

今回提出された改正案について,政府は,先の改正案から修正すべき点については修正したとしている。しかし,今回提出された改正案も,以下に述べるとおり現在の入管行政について様々に指摘されている人権侵害を放置し,助長することになる問題点がそのまま残っており,さらに,難民保護に関する国際法上の原則に反するものである。

まず,難民申請者に対する送還を停止する現行規定について,改正案は,送還停止の対象を原則2回目までの難民申請者とし,3回目以降の難民申請者は送還可能としている。しかし,難民認定率が他国よりも著しく低い現状を改めないままでは,かかる改正により,国際法上の原則であるノン・ルフールマン原則(迫害される恐れのある国に送還することを禁止する原則)に違反する事案を生み出すことになり,断じて許されない。

また,改正案では,収容の長期化を防止する制度として,収容に代わる監理措置を設けた上で,3か月毎に収容を継続するか監理措置に移行するか判断することとされている。しかし,収容する場合の期間の上限は定められておらず,また,収容に関する司法審査の導入もなされないままである。収容実務を担う入管当局が自ら判断する仕組みでは,収容の長期化の防止には期待できない。

さらに,退去命令に従わないときには刑事罰を科する制度の創設に至っては, 日本で生まれ育ち国籍国に全く縁のない者や,送還後に迫害のおそれがある者など,国籍国への帰国そのものが著しく困難である者を進退両難の地位におくものであって,人道的に許されない。

当会は,2020年(令和2年)10月28日及び2021年(令和3年)5月7日に発出した会長声明において,これらの重大な問題を抱える入管法の改正に反対しているが,その問題点が何ら解消されないまま再提出された入管法改正案に対し,改めて強く反対する。

 

2023年(令和5年)3月24日
静岡県弁護士会
会長 伊豆田 悦義