憲法改正手続法の改正に抗議し,その抜本的な見直しを求める会長声明

  1.  本年6月11日,「日本国憲法の改正手続に関する法律」(以下「憲法改正手続法」という。)の一部を改正する法律案が参議院で可決され,成立した(以下「本改正法」という。)。
     憲法改正手続法は2007年(平成19年)5月に成立したが,その際,参議院憲法調査特別委員会が,「最低投票率制度の意義・是非について検討を加えること」,「テレビ・ラジオの有料広告規制について必要な検討を加えること」等の18項目にわたる附帯決議をしたように,重大な検討課題が数多く残されていた。同法の問題点については,当会においても,民主的かつ公正さの観点を欠く重大な問題が存在する旨を表明する会長声明を発出したところである。
  2.  しかしながら本改正法は,上記の重大な検討課題に関する改正ではなく,駅や商業施設への共通投票所の設置や期日前投票の弾力化など,2016年(平成28年)の公職選挙法の改正に伴い導入された投票環境向上のための規定を整備するにとどまっている。
     そのため,本改正法の下で憲法改正国民投票が行われた場合,テレビ・ラジオの有料広告規制が不十分であり,また,2007年(平成19年)の同法成立後に急速に普及したインターネット上における有料広告に対する規制もないため,資金力のある者は,圧倒的な影響力があるテレビ・ラジオCMやインターネットを使っての広告ができる一方,資金力のない者はその機会が得られず,国民投票運動における公平性を著しく欠くこととなる。
     また,本改正法には最低投票率制度の定めもないため,賛成票が有効投票の過半数に達すれば,憲法が改正されることとなる。その結果,投票率や白票,無効票の割合次第では,賛成票を投じる国民がごく僅かであるにもかかわらず,憲法が改正されてしまうおそれがある(例えば,全有権者の45%が投票し,そのうち,白票や無効票の割合が5%であった場合,有権者の20%程度の賛成票で憲法が改正できてしまう)。これでは憲法改正における主権者の意思を正確に反映させるものといえず,憲法改正の正当性に疑義が生じうる。
     その他にも,公務員や教育者について,その「地位を利用した」国民投票運動が規制され,罰則も科される余地があることから,これらの者の国民投票運動に重大な萎縮効果を及ぼすという問題や,「国民投票広報協議会」の中立性,公正性を担保するための規定が不十分であるなどの問題も手付かずのままである。
  3.  日本国憲法は,国民主権・基本的人権の擁護・平和主義という人類普遍の原理に基づく国の基本法である。憲法改正手続法は,このような日本国憲法の改正手続について定めた法律であり,公平性,公正さの確保や国民の意思の反映において不十分な点は,早急に見直されなければならない。
     ところが本改正法は,これらの重要な検討課題については全て先送りし,公職選挙法の改正内容を憲法改正手続法に機械的に反映させるだけの改正にとどまっている。
     当会は,このような不十分な改正に抗議するとともに,憲法改正が発議され国民投票が行われる手続が,憲法改正の是非にかかる国民の意思が十分に反映され,かつ公平公正に実施されるものとなるよう,憲法改正手続法の抜本的な見直しを早急に行うことを求める。

 

2021年(令和3年)6月25日
静岡県弁護士会
会長 諏訪部 史人

ページトップへ戻る