「出入国管理及び難民認定法等」改正に反対する会長声明

  1.  今期通常国会において,「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案(以下「本改正案」という。)」が提出され,現在衆議院において審議されている。本改正案は,①難民申請者に対する送還停止の効力の一部解除,②収容に代わる監理措置制度の創設,③送還に応じなかった者に対する刑事罰を含む退去命令制度の創設など多くの問題を有するものである。当会は,2020年10月28日にこのような改正方針に反対する会長声明を発しているが,本改正案の国会への提出を受けて,改めて本改正案に強く反対するものである。
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  3.  もともと,我が国の収容制度は,司法審査を経ないまま,対象全件について無期限の収容を許す制度となっており,その制度自体に問題がある。非人道的な長期収容に耐えかねた被収容者がハンガー・ストライキに追い込まれるケースもあり,2019年6月には餓死者が出る事態にまで至っている。また2021年3月には,名古屋出入国在留管理局に収容されていたスリランカ人女性が適切な医療を受けられず死亡するという痛ましい事態が発生した。長期収容の問題を送還の促進で解決すべきとの立場で出された本改正案は,その手段を誤るものである。
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  5.  難民申請者に対する送還停止の効力を一部解除する本改正案は,難民申請者であっても強制送還を可能とするものであるが,かかる改正は難民を迫害を受けるおそれのある国に追放・送還することを禁じる国際法上の原則であるノン・ルフールマン原則に違反する。同原則は,国連難民条約第33条に規定されている確立した国際人権規範であり,我が国も批准している。
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  7.  さらに,本改正案では,収容の長期化を防止する制度として,収容に代わる監理措置が設けられているが,弁護士や支援者などの就任が予定されている監理人に罰則を伴う監督・報告義務を課す点で,支援者や弁護士と対象者の信頼関係を損ないかねない。特に代理人として対象者の利益を守り,守秘義務を負う弁護士の立場とは相容れず,対象者の人道支援や権利擁護活動に支障をきたすおそれは大きい。
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  9.  また,退去強制令書の発付を受けた者に対し退去命令を発し,これに従わないときには刑事罰を科する制度の創設に至っては,刑罰をもって強制することの必要性及び要件の明確性を欠く。
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  11.  以上のとおり,長期収容の解決のためには,①収容にあたり事前に司法審査手続を導入すること,②その審査においては,必要性,相当性のない収容はしないことを原則とすること,③収容する場合はその期間を限定することをまず制度化すべきで,そのための検討を開始すると共に,本改正案を速やかに廃案とするよう求めるものである。
  12. 以 上

 

2021年(令和3年)5月7日
静岡県弁護士会
会長 諏訪部 史人

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