令和3年5月1日に発生した竜巻・突風災害を踏まえ,①静岡県及び被災市町に,同災害で被災した県民のために最大限の支援措置を講ずるよう求めるとともに,②静岡県に将来の自然災害に対する災害救助法の4号適用の積極的活用を提言する会長声明

  1. 第1 会長声明の趣旨
    1.  当会は,静岡県及び被災市町に対して,令和3年5月1日に発生した竜巻を含む突風被害(以下,「本件災害」という。)の被災者の生活再建,住宅再建を後押しすべく,被災者に対して,必要にして十分な自治体独自の支援を行うよう求める。
    2.  当会は,静岡県に対し,県内で,災害による多数の人的被害又は住家被害等の物的被害が発生した場合,又は発生するおそれが生じた場合には,被災県民の立場にたち,躊躇なく,災害救助法施行令(以下,「施行令」という。)第1条第4号に基づく災害救助法の適用(以下,「4号適用」という。)を積極的に検討するよう求める。

     

  2. 第2 会長声明の理由
    1.  静岡県の発表(5月5日17時時点)によれば,本件災害において,牧之原市で軽症者3名,住家の半壊6棟,一部損壊75棟,非住家の全壊6棟,電柱倒壊16本,車両横転5台及び農作物や農業施設などの被害がみられ,牧之原市,菊川市及び沼津市の3市の建物被害が合計で150棟を超えるなど,県内で甚大な被害が発生している。
    2.  しかしながら,本件災害の被害規模が,施行令第1条第1号ないし第3号に定める住家滅失の基準(以下,「住家滅失基準」という。)を満たさないために,本件災害にはこれら各号に基づく災害救助法の適用がなされていない。
    3.  住家滅失基準は,各自治体の人口比等に応じ一定数の住家の滅失件数を基準として定めるものであるが,本来,災害により被災した市民には,等しく国や自治体による支援がなされるべきところ,同じ被害を受けていながら,当該被災住家が所在する自治体の人口規模や,他に被害を受けた住家がどれだけあるかなどによって,国や自治体からの支援が受けられるかどうかに差異が生じている。
    4.  このため,施行令第1条第4号では,そのような場合でも,被災者に対する公平,平等な支援を可能とするべく,住家の滅失件数が住家滅失基準に達しない場合であっても,「多数の者が生命又は身体に危害を受け又は受けるおそれが生じた場合であって,内閣府令で定める基準に該当するとき」には,災害救助法の適用が可能となっている。なお,「内閣府令で定める基準」とは,「災害が発生し又は発生するおそれのある地域に所在する多数の者が,避難して継続的に救助を必要とすること」(府令第2条第1号)などである。
    5.  この点,国も,「災害救助法の概要(令和2年度)」(内閣府政策統括官(防災担当))において,この4号適用に関して,「発災後の迅速な適用が可能であるが,客観的な基準があるわけではないことから,被害の程度が不明確な状況での適用を逡巡する傾向がある。」と評した上で,法適用判断に当たっては,「法の目的である「被災者の保護」と「社会の秩序の保全」のためには,何よりも迅速な法適用が必要であり,迅速な法適用判断が可能な4号基準による適用を積極的に進めるべき。」としている。
       また,内閣府「被災者に対する国の支援の在り方に関する検討会」による「最近の竜巻等突風被害を踏まえた被災者支援の推進に関する提言」(平成25年12月)においても,「これまで,竜巻等突風により,全壊や半壊などの住宅被害が多数発生していることから,こうした被害が発生した場合には,災害救助法を速やかに適用し,住宅の応急修理,避難所や応急仮設住宅の設置,自宅に流入した障害物(がれき)の除去などの救助措置を的確に実施することが効果的である。」と指摘している。
    6.  前述のように,4号適用の基準は,「多数の者が生命又は身体に危害を受け又は受けるおそれが生じた場合(であって,内閣府令に定める基準に該当すること)」とされ,具体的な被害状況の把握前の段階でも,被害のおそれがあれば適用が可能な条項となっている。他方で,災害救助法の救助は「現に救助を必要とする者」に対して行うという大前提があるため,災害による危難が完全に去ったあとでは4号適用には文言上困難を伴う場合も懸念されるため,都道府県としては,災害発生の直後に,躊躇なく,4号適用の検討と適用に向けての動きをとることが極めて重要となる。国による上記言及もこうした点を考慮したものと思われる。
    7.  本件災害に対しては,4号適用がなされておらず,このため,応急仮設住宅の提供や応急修理制度など災害救助法に基づく被災者に対する救助措置が行えない事態が生じている。本件災害では,特に牧之原市において風速55メートルともみられる竜巻の可能性のある突風被害により,多数の建物が全半壊し,また電柱等の土地工作物が倒壊するなどしており,「多数の者が,避難して継続的に救助を必要とする」状況は想定でき,上記内閣府令の定める(災害が発生した地域に所在する)「多数の者が避難して継続的に救助を必要とすること」を満たすものとして,4号適用に踏み切るという判断もあり得たように思われる。
    8.  ところで,台風による風水害の多い我が国では,台風・豪雨災害による災害救助法適用の事例が数多くあるところ,昭和33年の狩野川台風に匹敵する被害が予想された令和元年台風19号のときには,14都県にて,390の市町村及び区に対し災害救助法の適用がされた。
       令和元年台風19号の際には,静岡県においても,伊豆の国市(一部損壊21棟,床上浸水301棟)・田方郡函南町(一部損壊54棟・床上浸水267棟)を始めとして,449棟の一部損壊及び1010棟の床上浸水の住家被害が発生した。
       このときの各都県における施行令第1条各号の適用状況は,栃木県では20市町における適用のうち那須烏山市の1号適用と小山市の2号適用,静岡県では2市町(伊豆の国市と田方郡函南町)に対する1号適用のみがあったが,他の都県では全て4号適用であった。
    9.  もとより,静岡県では,被害者生活再建支援法の対象とならない県独自の災害の支援制度(被災者自立生活再建支援制度)を始めとして,各種支援制度の充実を図っている。
       本件災害においても,静岡県は,被災者に対して生活再建に向けた支援金を交付する目的で,3300万円の一般会計補正予算を成立させた。
       今後とも静岡県及び被災市町に対し,同災害で被災した住民のために最大限の支援措置を講ずるよう求める。
    10.  さらに,静岡県には,被災された県民の生活を等しく守り,災害からの復旧,復興を後押しする観点から,将来の災害発生時に,躊躇なく災害救助法4号適用の検討を行うよう求めるものである。

 

2021年(令和3年)5月29日
静岡県弁護士会
会長 諏訪部 史人

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