特定商取引法及び預託法における契約書面等の電子交付に反対する会長声明

  1.  政府は,今般,特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)及び特定商品の預託等取引契約に関する法律(以下「預託法」という。)における申込書面,概要書面,契約書面(以下「契約書面等」という。)について,消費者の承諾を得た場合は電磁的方法で交付することを可能とする特定商取引法及び預託法の改正法案を国会に提出した。
     しかし,当会は,以下の理由により,特定商取引法及び預託法が規定する契約書面等の交付義務を緩和し,紙媒体の契約書面等の交付に代えて電磁的方法による契約書面等の交付を可能とする法改正に反対する。
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  3.  まず,特定商取引法において書面交付義務が規定されている趣旨は,不意打ち的な勧誘により契約内容を冷静に確認せずに契約締結に至るおそれが強い契約類型であることに鑑みて,重要事項を記載した契約書面等の交付を義務付けることで消費者保護を図るとの点にある。
     例えば,訪問販売のクーリング・オフについていえば,契約書面の交付がクーリング・オフ期間の起算点となっているうえに,クーリング・オフの事項は契約書面に赤枠・赤字・8ポイント以上の活字で記載しなければならないとされており,これらルールは,ここまでの厳格な規制をしなければ消費者に対する注意喚起の機能が果たされなかったという立法事実を反映したものである。
     次に,預託法において書面交付義務が規定されている趣旨は,商品の預託に伴い財産上の利益を提供することを約する契約類型であることから,契約書面等の交付を通じて預託利益を生み出す収益事業の実現可能性を消費者に検討させ,もって,消費者保護を図るとの点にある。
     加えて,特定商取引法,預託法いずれにおいても,紙媒体の契約書面等が存在することで,高齢者や若年者が不当な契約を締結してしまった場合に,家族や見守り活動者がその不当な契約の存在に気付き,被害回復を図る契機となってきた。
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  5.  以上の通り,紙媒体の契約書面等は,特定商取引法,預託法いずれにおいても,消費者保護という重要な機能を果たしてきたところ,仮に特定商取引法及び預託法において,電磁的方法による契約書面等の交付が認められてしまえば,かかる消費者保護の機能が失われてしまう,もしくは低下するおそれが極めて高い。
     この点,消費者庁は,電磁的方法による契約書面等の交付を認める要件として,消費者の承諾を得ることが必要と表明している。しかし,そもそも,書面交付義務は,契約内容や権利を十分に理解・認識していない消費者を保護するための措置であって,電磁的方法による契約書面等の交付を選択することによる問題点を十分に理解していない消費者から承諾を得たとしても,それが真意に基づく承諾と言えるのかは疑問であるから,かかる要件によって電磁的方法による契約書面等の交付を認める考え方は,消費者保護という書面交付義務の趣旨に反すると言わざるを得ない。
     よって,当会は,特定商取引法及び預託法において,電磁的方法による契約書面等の交付を可能とする法改正に反対するものである。
  6. 以 上

 

2021年(令和3年)3月24日
静岡県弁護士会
会長 白井 正人

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