留学生に日本人学生と同じ基準で給付金を支給することを求める会長声明 

日本政府は,新型コロナウイルスの影響で学費や生活費などに困窮する学生を支援するための緊急の措置として,「学びの継続」のための『学生支援緊急給付金』(以下「給付金」という)を創設した。しかしながら,留学生に対する給付については,学業成績が優秀な者(成績評価係数(上限3)で2.30以上)であることという,日本人学生に対しては課されていない要件(以下「成績要件」という)を課して支給対象を限定している。成績評価係数で2.30以上の成績を保持している学生は,学生の概ね上位3割程度だといわれており,多くの留学生が支給対象から除外されることとなる。

 

報道によると,文部科学省は,留学生についてのみ成績要件を設けたことについて「いずれ母国に帰る留学生が多い中,日本に将来貢献するような有為の人材に限る要件を定めた」などと説明している。

しかし,そもそも給付金は新型コロナウイルスの影響で生活に困窮した学生を支援するためのものであり,支援の必要性は日本人学生と外国人学生で変わるものではない。また,日本政府が「いずれ帰国する学生には支援不要」と考えたのであれば,今現在日本に直接利益をもたらすと思われる留学生のみを保護するという短絡的な発想に留まるものであり,留学を含む学問に対しての長期的展望の必要性を軽視しているといわざるを得ない。本給付金の支給要件において留学生にのみ成績要件を設けるのは不合理な差別といえよう。

 

そもそも国は,2008年に留学生30万人計画を掲げ,その達成の目処を2020年に設置して,日本を世界により開かれた国とするべく,積極的に留学生を受け入れてきた。また,留学生が勉学に専念できる環境作りへの取り組みとして,留学生への生活支援についても約束してきたのである。

かかる政策は,単に「将来日本に貢献」してくれる「有為の人材」獲得だけが目的ではないはずである。留学生の受け入れを通じた国際貢献としての意義や,留学生が帰国した後,母国と日本との交流の架け橋になるという意義なども,「有為の人材」獲得と同様に重要である。

かかる経緯に鑑みても,新型コロナウイルスの影響で,国籍を問わず多くの学生が経済的に困窮している中で,留学生に対してのみ成績要件を課すことは同政策の趣旨に合致しないものであろう。

 

以上から,当会は,成績要件を撤廃し,留学生に対しても,日本人学生と同じ基準を用いて給付金を支給することを強く求める。

 

2020年(令和2年)6月16日
静岡県弁護士会
会長 白井 正人