辺野古新基地建設に関する沖縄県民投票の結果を尊重することを求める会長声明

  1.  2019年(平成31年)2月24日,沖縄県において「普天間飛行場の代替施設として国が名護市辺野古に計画している米軍基地建設のための埋立てに対する賛否についての県民による投票」が実施された。この投票における投票率は52.48%であり,有効投票数60万1888票のうち7割を超える43万4273票が「反対」の意思を表明した。
     沖縄県では,2014年(平成26年)11月及び2018年(平成30年)9月に実施された知事選挙においても辺野古新基地建設の是非が主要な争点となり,いずれの選挙においても辺野古新基地建設反対を公約に掲げた知事が当選している。
     これらの結果からは,現時点において,沖縄県民の多数が,辺野古新基地の建設に反対していることが明確になったといえる。
     しかし,沖縄県民の民意が明確に示されたにもかかわらず,政府は,「県民投票の結果を真摯に受け止める」と述べる一方で,辺野古新基地建設を「これ以上先送りできない」として,2018年(平成30年)12月から始まった辺野古沿岸部を埋め立てる工事を,今日まで続けている。
  2.  沖縄県は,太平洋戦争の過酷な地上戦を経てアメリカ軍に占領され,1945年(昭和20年)から1972年(昭和47年)の本土復帰までの27年間,アメリカ合衆国の統治下にあった。その間,アメリカ軍は,土地の強制接収を行い,次々と新しい基地が建設された。
     そして,本土復帰後も,本土では基地の整理縮小が進む一方で,沖縄県では多くのアメリカ軍基地が日米安全保障条約に基づく提供施設・区域として引き継がれた。1950年代の本土における反基地運動により,静岡県を含む本土から沖縄県に海兵隊等が移転したことによって,沖縄県の負担のもとに本土の基地負担が軽減されてきたという歴史的経緯もある。
     その結果,現在では国土面積の約0.6%に過ぎない沖縄県に,全国のアメリカ軍専用施設面積の70.6%(2017年(平成29年)1月1日現在)が集中し,沖縄県民は過重な基地負担を背負い続けている。
  3.  日本国憲法第92条は,地方自治制度の運営は「地方自治の本旨」に基づいて行われることを保障しているが,その対象は地方自治が団体の意思と責任の下で行われるべきとする団体自治のみならず,地方自治が住民自身の意思に基づいて行われるべきとする民主主義的要素である住民自治も保障されている。先に述べた通り,沖縄県民は繰り返し「辺野古新基地建設反対の意思」を表明しており,その民意は,住民自治の観点からも最大限尊重されなければならない。
     また,日本国憲法第95条は,「一の地方公共団体のみに適用される特別法は,法律の定めるところにより,その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意」を得なければならないと定めるが,その趣旨は,地方公共団体の個性の尊重,地方公共団体間の平等権の保障,特別法による地方公共団体の自治権の侵害の防止,地方行政における民意の尊重といった点にあり,国が特定の地方公共団体に不利益な事項を定めるときには,その住民の意思を十分に尊重することが憲法上も要請されているというべきである。したがって,まさに特定の地域だけに長期間の基地負担を求めることになり得る辺野古新基地建設の是非についても,住民の意思を十分に尊重することが憲法上要請されているというべきである。
     以上のように,繰り返し表明された沖縄県民の辺野古新基地建設反対の意思は,憲法第92条及び憲法第95条の趣旨に照らし,最大限尊重されなければならない。
     他方で,政府の説明は,普天間飛行場の危険除去のためには辺野古に新基地を建設することが「我が国の防衛上唯一の解決策」であると繰り返し説明するにとどまる。しかし,沖縄駐留の海兵隊は,ローテーションにより一年の半分以上の期間、海外で訓練を行っており,その間沖縄を不在にしているのみならず,運用の母艦となる強襲揚陸艦の母港は沖縄県外にあることからしても,沖縄県における海兵隊の駐留が国防上必須であるという政府の説明は,憲法第92条及び憲法第95条によって尊重されるべき沖縄県民の民意を否定するだけの説得的な材料を有していない。
  4.  当会は,2019年(令和元年)6月16日に,「沖縄発 日本の民主主義のつくり方」というシンポジウムを開催し,辺野古新基地建設の是非を問う県民投票を題材として,地方自治法第74条を根拠とする住民投票条例の制定過程やその効果,その前提として沖縄県民が負担する過大な基地負担の問題について,150名を超える参加者とともに考える機会を設けた。
     このシンポジウムでも報告されたとおり,辺野古新基地建設の是非を問う県民投票は,意見対立を乗り越えて最終的に沖縄県民が賛同して制定された条例に基づいて実施されたものであり,その投票結果は,現在の沖縄県民の意思が率直に反映されたものである。政府が,この投票結果を尊重しないことは,住民意思の無視,すなわち「民主主義の学校」ともいわれる地方自治を無視することにほかならず,権力の集中を防ぐことによって人権を保障するという近代立憲主義の理念にも反することは明白である。
  5.  政府が沖縄県民の意思を尊重せずに辺野古新基地建設工事を続行することは,憲法第92条及び憲法第95条の趣旨に反すると言わざるを得ない。
     当会は,戦後70年以上が経過した現在も,アメリカ軍基地の問題によって沖縄県民の権利が侵害され続けている現状を,今後も広く世に知らしめるとともに,政府に対して,沖縄県民の意思を尊重し,県民投票の結果を真摯に受け止めて,辺野古沖への土砂投入を停止し,辺野古新基地建設について根本的に再考することを求める。

 

2019年(令和元年)8月28日
静岡県弁護士会
会長 鈴木 重治

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