労働者派遣法の改正に反対する会長声明

政府は,先の通常国会で審議未了・廃案となった「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案」(以下「改正案」という。)を臨時国会に再び提出して今国会での成立を目指すとしており,現在は衆議院での審議がおこなわれている。

この改正案は,【1】企業が同一業務について派遣労働を利用できる期間を規制する「業務単位での期間制限」を廃止し,また,この期間制限の及ばない「専門28業務(旧26業務)」という区分も廃止して,「個人単位の期間制限」に改め,同じ派遣労働者が同じ職場で働ける期間につき上限を3年とすること,【2】上限年数に達した派遣労働者に対する雇用安定措置として,派遣元は(1)新たな派遣就業先の提供,(2)派遣元における無期雇用化,(3)その他雇用の安定を図るために必要な措置(派遣先への直接雇用依頼を含む)のいずれかの措置を講じなければならないこと,【3】「派遣先単位の期間制限」として,原則として,同一の事業所において3年を超えて継続して派遣労働者を受け入れてはならないが,受け入れ開始から3年を経過するまでに過半数労働組合等から意見を聴取した場合には,さらに3年間受け入れることができること等を内容とするものである。

しかし,まず上記【1】については,「業務単位での期間制限」から「個人単位の期間制限」への変更により,派遣先・派遣元企業が3年経過する毎に派遣労働者を入れ替えて派遣労働を継続することが可能となり,派遣労働の固定化につながるおそれがある。また,「課」を移動すれば「同じ職場」には当たらないとされているため,結局は派遣労働者の地位のまま同一社内の職場を転々とさせられる者が多数生ずるであろうことが容易に予測できる。他方で,これまで派遣期間が制限されなかった「専門28業務」の区分廃止については、改正によって新たに派遣期間制限の対象となる派遣労働者が発生し,かえって雇用の不安定化を招くおそれもある。

次に上記【2】については,派遣先への直接雇用申し入れも派遣元での無期雇用化も,これらの雇用安定措置に私法的な効力を付与しない限り,期間の上限に達した派遣労働者の失職を事実上防ぐことはできず,実効性を欠くものと言わざるを得ない。

そして上記【3】については,多くの事業所において労働者過半数代表の意見聴取制度が形骸化している現状からすれば,何の歯止めにもなりえず,派遣労働者をいつまでも継続して使うことが可能となる。

結局,改正案は,表向きは「派遣労働の利用を臨時的・一時的なものに限ることを原則とする」と言いながら,派遣労働者を定期的に入れ替えることによって,派遣労働を半永久的に利用することを可能とする点で,法の理念である「常用代替防止」とは相容れないばかりか,むしろ「常用代替を助長」するものと言わざるを得ない。

現在,我が国の非正規雇用労働者は労働者全体の4割近くにまで達し,格差社会の広がりが社会問題化する中,本改正案は非正規雇用労働者をますます増大させ,雇用の不安定化や労働条件の更なる悪化を招くものであり,到底容認することはできない。

当会は,雇用の安定と労働条件の改善のため,2008(平成20)年9月30日に「労働者派遣法の抜本的見直し等を求める会長声明」を発表し,雇用責任が曖昧・不明確になりやすい労働者派遣法の抜本的な改正を求めてきたところである。

ところが,今回の改正案はこの会長声明の趣旨にも反するものであって雇用の不安定化と労働条件の更なる悪化を招くことは明白である。 当会は,このような改正案に強く反対するとともに,雇用の安定確保と労働条件の改善のため,「常用代替防止」の理念を堅持する方向での労働者派遣法の改正を行うよう改めて求める。

 

2014(平成26)年11月5日
静岡県弁護士会
       会長 小長谷 保

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