静岡県内での裁判員裁判の公判開始にあたっての会長談話 

本日、裁判員が参加する静岡県内での初めての公判が静岡地方裁判所沼津支部で始まりました。明日からは、浜松支部でも始まる予定です。

市民が刑事裁判に直接参加することは、主権者である国民が司法に参加することであり、大きな意義のあることだと考えます。さまざまな経験と知識を持つ市民の多様な視点が司法に持ち込まれ、市民の常識が刑事裁判に反映されることになろうと期待されます。また、刑事裁判についての国民の関心が高まり、犯罪と刑罰についての国民的な議論の深まりも期待されます。

裁判員になられた方々はもちろんのこと裁判員候補者になられた方々にもご負担をかける制度ではありますが、司法への参加という主権者としての権利行使の面を積極的に評価していただきたいと考えます。

裁判員裁判は、市民である裁判員が裁判官とともに、被告人が有罪であるか否か、有罪である場合にはどういう刑にするかを決める制度です。刑事裁判では、「疑わしきは罰せず」という原則が貫かれなければなりません。裁判員の皆様は、有罪とすることに疑いはないと確信できないとき、少しでも疑問が残るときは、無罪という意見を述べて下さい。無実の市民を誤って処罰することが絶対にないこと、冤罪を防ぐことが、市民の自由と権利を守ることになりますし、結局は被害者の権利を守ることになります。

まだ始まったばかりの制度ですから、改革、改善しなければならない点が多かろうと考えられます。静岡県弁護士会は、取調べの可視化(取調べの全過程の録画)を実現し、被疑者・被告人の権利が十分に保障された適正な刑事裁判手続きの実現を目指します。そして、裁判員の守秘義務の問題、裁判員裁判の対象の問題などを考え、更に、より良い刑事裁判の実現のために、裁判員裁判の実情を検証し、改革すべきことや改善すべきことを見いだし、提言していきます。

また、私たち静岡県弁護士会所属の弁護士は、充実した裁判員裁判を実現し被告人の利益を守るため、また、より分かりやすい刑事裁判を目指し、更なる研鑽を積んでいく所存です。

2009(平成21)年10月26日
静岡県弁護士会
会長  鈴木 敏弘

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