改正貸金業法の早期完全施行等を求める会長声明 

当会は,多重債務者の数が150万人とも200万人とも言われ,破産者が年間約20万人,経済苦・生活苦による自殺者が年間8,000人にも達していた状況を直視し,2006年5月,みなし弁済規定の廃止のみならず,出資法の上限金利を,利息制限法の制限利息まで引き下げることを求める立法運動など,多重債務問題解決の諸活動を行っていくことの意見を表明し,その後,実際にも,「上限金利引き下げ静岡実現本部」を立ち上げ,街頭運動や,議会に対し改正に関する請願活動を行なう等,多重債務問題解決に向けて積極的に活動してきた。

2006年12月には,出資法の上限金利の引下げ,収入の3分の1を超える過剰貸付契約の禁止(総量規制)などを含む改正貸金業法が成立するとともに,政府は,多重債務者対策本部を設置し,同本部は(1)多重債務相談窓口の拡充,(2)セーフティネット貸付の充実,(3)ヤミ金融の撲滅,(4)金融経済教育を柱とする多重債務問題改善プログラムを策定した。当会でも,「上限金利引き下げ静岡実現本部」を「多重債務対策静岡県本部」に改組し,多重債務問題解決に向けた積極的な運動を展開してきたところである。

これら多重債務問題対策の結果,2008年の自己破産者数が13万人を下回るなど,着実にその成果を上げつつある。

ところが,現在,一部には,消費者金融の成約率が低下しており,借りたい人が借りられなくなっている,特に昨今の経済危機や一部商工ローン業者の倒産などにより,資金調達が制限された中小企業者の倒産が増加しているなどを殊更強調して,改正貸金業法の完全施行の延期や貸金業者に対する規制の緩和を求める論調がある。

しかし,これら資金需要に対しては,セーフティネット貸付の充実等により対応すべきものであり,改正貸金業法の完全施行の先延ばし,金利規制などの貸金業者に対する規制の緩和は,再び自殺者や自己破産者,多重債務者の急増を招きかねず,法改正前のような深刻な多重債務問題を再燃させるおそれがあり,決して許されるものではない。

改正貸金業法の早期完全施行,多重債務相談体制の拡充,セーフティネット貸付の充実,ヤミ金融の撲滅を図ることこそ多重債務問題の解決において求められる施策である。

そこで,当会は,改正貸金業法の完全施行の延期などを求める上記一部の論調に強く反対するとともに,国及び地方公共団体に対して以下の施策を求める。

  1. 改正貸金業法を早期に完全施行すること。
  2. 自治体での多重債務相談体制の整備のため相談員の人件費を含む予算を十分確保するなど相談窓口の充実を支援すること。
  3. 個人及び中小企業向けのセーフティネット貸付をさらに充実させること。
  4. ヤミ金融を徹底的に摘発すること。
2009(平成21)年10月28日
静岡県弁護士会
会長 鈴木 敏弘

ページトップへ戻る