【声明・決議・意見】 安保法制成立から10年にあたり、 改めて同法制が違憲であることを確認する会長声明

2015年9月19日に平和安全法制整備法及び国際平和支援法(以下併せて「安保法制」という。)が成立してから、10年が経過した。

 

日本国憲法は前文及び第9条において徹底的な恒久平和主義を定めており、他国のために武力行使をする集団的自衛権は、歴代政府が一貫してこれを認めるには憲法改正が必要との解釈を行っていた。

安保法制の最大の法的問題点は、歴代政府が一貫して憲法改正が必要と解釈していた集団的自衛権について、国民を憲法改正手続に関与させることなく、閣議決定により憲法解釈を変更し、その解釈変更を前提に安保法制を成立させた点にある。このような安保法制は憲法第9条に反するばかりか、法律によって憲法を改正するもので立憲主義に反するものである。

 

安保法制の国会審議の過程においては、参考人として招致された3名をはじめとする憲法学者、最高裁判事経験者、内閣法制局長官経験者らが揃って違憲性を指摘した。また、多数の憲法学者が安保法制に反対し、国民による大規模な反対運動が展開され、国会前にも多数の人々が詰めかけ反対の声をあげ続けた。そして、日本弁護士連合会及び全国52のすべての弁護士会が反対の会長声明を出し、当会も安保法制が成立する約3か月前にこれに反対する会長声明を発した。しかし、政府はこれらの声に一切耳を傾けず、法案を強行的に成立させた。

 

安保法制成立後の10年間に、政府は米艦艇や航空機の防護活動を常態化させ、米軍と一体化した軍事訓練を繰り返してきただけでなく、2022年12月にはいわゆる安保三文書(国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画)を閣議決定し、敵基地攻撃能力(反撃能力)保有に向けた取り組みを進めるとともに、2023年度から5年間の防衛費を総額43兆円へと大幅に増加させる閣議決定の下、同年度防衛予算を前年度26%増の6兆7880億円へ、2025年度には8兆7005億円まで増加させている。政府は、憲法がめざす平和主義に背を向け続けている。

しかし、違憲の法律は、何年経っても違憲であることに変わりない。そこで、当会は、安保法制成立から10年にあたる本年9月19日、安保法制の違憲性を訴えて、街頭宣伝を行ったところである。

 

当会は、安保法制10年にあたり、改めて安保法制の違憲性を確認し、今後立憲主義を回復すべく、引き続き安保法制の廃止を求めて取り組んでいく決意である。

 

2025年(令和7年)10月2日
静岡県弁護士会
会長 村松 奈緒美

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